プログラム

Program

2021年12月13日(月) 開演20時00分

ベルリン特別公演オンラインコンサート
フィルハーモニー・ベルリン大ホール

曲目解説

「ル・ポン国際音楽祭2021」はみんなが特等席!
コロナ禍における日本への厳しい入国規制により、約2年にわたり、外国からの演奏家の演奏を生で聴ける機会が激減している中、赤穂・姫路で行われるこの音楽祭を心待ちにしていたすべての人々の楽しみも2年続けてお預けになっています。
そんな中、音楽監督樫本大進さんの強い思いにより、オンラインコンサートという新しい形で「ル・ポン国際音楽祭2021」が実現することになり、予期せぬ嬉しいクリスマスプレゼントとなりました。

「ル・ポン国際音楽祭」は、樫本大進さんご自身がヨーロッパで経験してきた、演奏家の出身地やゆかりの地で開かれている、気軽で演奏者と聴衆との距離の近い、市民による手づくりの音楽祭を、日本でも開催したいとの思いから、2007年にスタートした音楽祭です。樫本氏にゆかりのある赤穂・姫路の人々の協力により、毎年10月に開催され、年々音楽祭も聴衆も進化し続けています。
地元の素晴らしいホールをはじめ、映画『ラストサムライ』で知られた「書写山圓教寺」、日本が世界に誇る国宝であり世界遺産の「姫路城」など、特別な場所で特別な雰囲気の中、演奏が聴けるのも魅力です。
音楽監督をはじめとするアーティスト、ボランティア、関わる全ての皆さんと聴衆のたくさんの愛が溢れたその温かな雰囲気もリピートしたくなる魅力の一つとなっています。

今年は逆に、いつもは海の向こうから参加してくださっているアーティストの皆さんが慣れ親しんだ、しかも世界最高のホールの一つ、ベルリン、フィルハーモニーから、音楽祭が届けられます。
ベルリン・フィルは、コロナ禍とは関係なく、いち早くライブ配信に取り組み始めたオーケストラでもあり、世界で最も優れたクラシックのライブ配信の経験とシステムを持ち合わせています。そんな最高の環境からの贈り物です。

毎年、世界最高の演奏家達が集う「ル・ポン国際音楽祭」は、室内楽の魅力にあふれています。
録音されたことのない珍しい室内楽の日本初演に出会えたり、聴いたことのある室内楽曲においても、これまでの最高の演奏に遭遇し、作品の新たな魅力に気づけたり、室内楽にそれほど興味のなかった人も一度参加すると室内楽の虜になってしまいます。近年、チケットはほぼ即日完売してしまうため、参加できずにいた方も多くいらっしゃることと思います。そして、これまで足を運びたくても運べなかった日本そして世界中のすべての音楽ファンに開かれたこのチャンスをどうぞお聴き逃がしなく!なんといっても無料ですから、これまで室内楽のコンサートに行ったことのない方から、室内楽マニアまで、すべての人に開かれた室内楽への入口です。

あらためて、「オンラインコンサートはみんなが特等席!」。
演奏のみならず、奏者たちが呼吸をあわせる姿、リーダーがメンバーに送る視線、リーダーを見つめるメンバーの表情、作曲家の思いが一つ一つの楽器に凝縮された室内楽だからこその奏者のコミュニケーションを間近で見られるのも、オンラインコンサートの醍醐味です。見逃し配信もたっぷり約1か月間予定されています。
ぜひ何度でも心行くまでお楽しみください!

音楽プロデューサー 児玉 洋子


  • <1曲目>
    W. A. モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 KV407

    W. A. Mozart: Horn Quintet in E-flat major KV407 (18分)
    2008/10/19 手柄山(姫路)/2012/10/7 パルナソスホール/2017/10/7 ハーモニーホール/2018/10/14 パルナソスホール

    「ル・ポン国際音楽祭」初のライブ配信はベルリンから優雅なホルンの響きで幕開けです!『ホルン五重奏曲K.407』は、ザルツブルク宮廷ホルン奏者ロイトゲープのためにモーツァルト(1756-1791)が書いた最初の曲。モーツァルトのホルン作品はわずか6曲ですが、その他のすべての曲(4つのホルン協奏曲とホルンのための協奏曲ロンド)も彼のために作曲しています。ザルツブルク時代からの友人であり、同時期にウィーンに移り住み、モーツァルトのパトロンでもあった彼がいたからこそ、ホルンの名曲が生まれました。冗談も言いあうほどの親しい間柄で、ホルン協奏曲の自筆譜にはロイトゲープに宛てたふざけた書き込みも見られます。モーツァルトのホルン作品が明るさに満ちているのは、そんなロイトゲーブとの関係性によるものという説もあります。この五重奏曲の弦セクションは、ヴィオラを2艇にし、低音域に重心を置くことで、ホルンがより温かく馴染み、自由に表現しやすい領域を作り出しています。そして、1艇となったヴァイオリンは、高音域でより際立った存在感を放ちます。第1楽章は、ホルンとヴァイオリンの掛け合いが特徴的で、優雅で楽しく溌剌としています。第2楽章は、ホルンの柔らかな温かい音色が生きる、甘く優しい音楽です。第3楽章は、茶目っ気溢れる優雅なロンドです。

  • <2曲目>
    ミヒャエル・ハイドン:ディヴェルティメント ハ長調 MH27

    M. Haydn : Divertiment in C major, MH27(15分)
    2015/10/24 赤穂城跡

    続いて、モーツァルトが常にお手本にしていたとも言われる知られざる名作曲家ミヒャエル・ハイドン(1737-1806)の作品です。有名なヨーゼフ・ハイドンの5つ下の弟です。ウィーンから約35キロ離れたローラウという村で生まれましたが、兄ヨーゼフと同様、ウィーンの聖シュテファン教会の聖歌隊でオルガン、ピアノ、ヴァイオリンを学びました。兄ヨーゼフよりも美しいソプラノボイスを持っていたそうです。1763年にはザルツブルク大司教の楽団コンサートマスターになり、81年にはモーツァルトの後任としてザルツブルク大聖堂のオルガニストとなりました。ミヒャエル・ハイドンも兄と同様多作な人で、約50曲の交響曲のほか、多くの協奏曲、約30曲のディヴェルティメントを含む室内楽を作曲したとされています。しかし、彼の作品は生前に整理されることはなく、死後1808年以降に複数の人たちによって整理されてきました。この曲の作曲年も定かではなく、1758~60年、1764-70年の間とされる二つの説があります。この曲の楽譜の追記には、“ミヒャエル・ハイドンの楽譜は当時手書きのものが使用され、印刷されることがありませんでした。しかし、この曲の楽譜の写しだけは、ミュンヘンの州立図書館に残されていました。おそらくこの楽譜の扉に明記されたP.W.R.というイニシャルを持つ友人により、コピーが残されたのでしょう”と書かれています。ミヒャエル・ハイドンを知ることのできる貴重な1曲です。ディヴェルティメントとは、特にウィーンにおいて、この時代の多楽章の器楽曲に好んでつけられたタイトルですが、この曲は、有名な兄ハイドンが確立したと言われる18世紀の典型的なソナタスタイルで書かれています。第1楽章では、低音部のコントラバスの支えの上で、ヴァイオリンとチェロが優雅に対話します。第2楽章は、洗練された優美なアダージョ。第3楽章は、ヴァイオリンとチェロが同じ旋律を奏でるメヌエットで始まり、もの哀しくもエレガンスなトリオをはさんで、軽やかなピチカートのメヌエットに戻り終結します。第4楽章は、当時の協奏交響曲風でリズムを刻み続けるコントラバスの上で、ヴァイオリンとチェロがほぼ同じ音もしくは3度違いの音程で同じフレーズを奏で、コンチェルタンテ(18世紀の協奏交響曲)風にフィナーレを盛り上げます。

  • <3曲目>
    ハインリヒ・ホフマン:フルートと弦のためのセレナード Op.65
    Heinrich Hofmann: Serenade Op.65(21分)
    2016/10/15 書写山圓教寺

    続いてベルリンの作曲家、ハインリッヒ・ホフマン(1842-1902)の登場です。『フルートと弦のためのセレナードOp.65』、とても美しいセレナードです。ミヒャエル・ハイドンと同様に、ハインリッヒ・ホフマンの名を聞いたことのある人も少ないことでしょう。ベルリンの貧しい職人の家庭に生まれましたが、非常に優れたボーイソプラノであったため、9歳の頃から聖歌隊で活躍し、パレストリーナ、バッハ、ヘンデルのスペシャリストとなり、その後オペラ合唱にも参加。その耳の良さから、ピアノも始めたとたんにヴィルトゥオーゾに成長し、声変わりをした後は、ベルリンのピアニスト、テオドール・クラークの元で音楽教育を受けました。ピアニスト、ピアノ教師としてのキャリアを積む傍ら、作曲も始めます。1875年の作品、カンタータ『美しいメリュジーヌの物語Op.30』は、ドイツ、イギリス、アメリカで20年にわたり1500回演奏されるなど、その時代には良く知られた作曲家でした。彼はオーケストラや室内楽作品はあまり書かなかったため、この作品は非常に貴重です。ホフマンの音楽を尊敬していたニューヨーク・フィルハーモニック・クラブのフルート奏者ユージン・ウィーナや、ドイツ音楽を勉強していたアンサンブルから委嘱を受けて1885年に作曲。バラエティに富んだテンポと主題、そしてハンガリー音楽のスタイルで終わる、とても魅力的な作品です。第1楽章は、チェロ、フルート、ヴァイオリンの順にテーマを歌い、6 つの楽器がカノンのように、時にはトゥッティでリズムを刻み、さわやかに進んでいきます。第2 楽章は、ほぼフルートがテーマを歌い、朝焼けのような静けさを感じさせます。第3 楽章は、6 拍子で音楽が旋回します。第4 楽章は、ハンガリーのリズムと音色が現れ、終盤は、弦が厚くなり、まるでフルート協奏曲のようです。2016年のル・ポン国際音楽祭では、この曲は夕暮れ時、書写山圓教寺の境内で演奏され、境内の鳥たちもパユのフルートに呼応してさえずり、音楽に参加していました。屋外で聴ける演奏もこの音楽祭の従来の魅力の一つとなっています。

  • ― 休憩 Intermission(10分)―
  • <4曲目>
    カミーユ・サン=サーンス:タランテラ Op.6
    Camille Saint-Saens: Tarantelle, Op.6 (7分)
    (初)2021/12/13 オンライン

    「ル・ポン国際音楽祭」では初のお披露目となる作品です。サン=サーンス(1835-1921)と言えば「白鳥」というイメージが先行し、本来の姿より過小評価されがちですが、生前は“モーツァルトの再来”と言われ、2 歳でピアノを弾き、3 歳で作曲を始め、10歳で演奏会を開き、ロッシーニ、ベルリオーズをはじめとする当時の音楽家たちにもその才能を評価された天才でした。ロッシーニは、自身が主催する夜会の常連ピアニストとしてお気に入りのサン=サーンスを起用していましたが、この曲もその夜会で1857年にお披露目されました。ロッシーニのオーダーにより、フルート奏者のルイス・ドルスとクラリネット奏者のアドルフ・ルロワのためにこの曲を書き、自身のピアノで初演しました。初演は高評価で、夜会を訪れた人々は、ロッシーニの作品だと思いこんでいましたが、演奏後、ロッシーニが「サン=サーンス」の作品であることを紹介し、その場にいた聴衆に若きサン=サーンスが絶賛されたというエピソードも残っています。さて、タランテラとは、南イタリアの港町、タラントに生息する毒蜘蛛タランチュラが由来で、この毒蜘蛛に噛まれたら、毒抜きのために疲れ果てるほど踊りつづけなければならないという言い伝えから生まれた踊りです。踊り続ける様を想像しながら聴くとよりエキサイティングです。淡々と飄々とタランテラのリズムを刻むピアノの上で、フルートとクラリネットがきまぐれに、エネルギッシュに休みなく最後まで絡み合います。ル・サージュ、パユ、フックス氏のお互いを知り尽くした3人が挑発しあいながら盛り上げて楽しませてくれることは間違いないでしょう!

  • <5曲目>
    ニーノ・ロータ:フルート、ヴァイオリン、ピアノのための三重奏曲
    Nino Rota: Trio for Flute, Violin and Piano(14分)
    2016/10/14 パルナソスホール

    『道』『甘い生活』『ゴッドファーザー』等映画音楽で知られるニーノ・ロータ(1911-1979)ですが、ピアニストの父の元、幼少期から音楽を学び、8歳で作曲を始めた神童でした。1923年、12歳でミラノ音楽院へ入学、19歳でサンタ・チェチーリア音楽院の作曲を卒業、カーティス音楽院でも学び、若くして作曲の王道を極めます。1942年以降、映画音楽の作曲を始めましたが、基本的にはクラシック作品を書き続けた作曲家です。この『三重奏曲』は、ロータの室内楽の中でも最も完成度が高いと言われている作品です。1958年、当時ローマで活躍していたクレム・トリオのために書かれました。第1楽章では、インテンポで持続するピアノ、そのうえで輝かしく舞うフルート、情熱的に激しくうなるヴァイオリンが、それぞれテクニカルに奏します。時折、アディエマスの「聖なる海の歌声」のサビを思い出させるアンビエントなフレーズが出てくるのが印象的です。第2楽章は、瞑想的な雰囲気の中、フルートとヴァイオリンが絡み合いながらも各々のテーマを主張し、ピアノがそれらを支えまとめ進行していきます。はじけるような喜びに満ちた輝かしい第3楽章に突入すると、さらにそれぞれの楽器の名人芸が交錯し、エネルギッシュなまま完結します。この曲も、パユ、樫本、ル・サージュ、3氏の熱演が楽しみです!

  • <6曲目>
    エルネー・ドホナーニ:六重奏曲 ハ長調 Op.37
    Dohnányi Ernő: Sextet in C major, Op.37(30分)
    2008/10/22 パルナソスホール/2013/10/12 パルナソスホール/2014/10/14 ハーモニーホール

    ドホナーニ・エルネー(1877-1960)は20 世紀に活躍したハンガリーの作曲家。同郷のバルトークやコダーイと同世代ですが、民族性を積極的に取り入れた彼らとは一線を画し、あくまで、ブラームスの流れを組む後期ロマン派の作風をつらぬいた作曲家です。1935 年に作曲された「六重奏曲作品37」は、弦楽四重奏にクラリネットとホルンが加わるという、大変珍しい編成で演奏されます。それだけに管楽器の響きがとても生きています。第1楽章は、各楽器の奏でる抒情的でもの哀しいテーマがエンディングまで交錯し続ける、激流のような音楽です。第2楽章は、静かに始まりますが、突然おどろおどろしいリズミックな進行に変わり、少々不気味な感覚に襲われます。第3楽章は、ヴァリエーション。クラリネットで始まり、快活に流れるように進んでいきます。終盤に第1楽章冒頭のテーマが表れ、絶え間なく第4楽章に突入します。急にガーシュウィンを思わせるようなジャズ風の音楽が始まり、ところどころにワルツが表れるのもこの楽章の楽しい聴きどころです。本日の作品の中で最もスケールが大きく、ロマンティックで壮麗な弦と管のアンサンブルを、フィルハーモニーの響きを知り尽くした演奏家たちが、オンラインで私たちの心まで名いっぱい響かせて届けてくれることでしょう。音楽に没入し無心になれる幸せなひと時を連れてきてくれるその時が楽しみでなりません! 終演後の一抹の寂しさは、12月14日から1月12日まで予定されている見逃し配信で晴らすことが出来るのも嬉しいプレゼントですね。